約束の3年 ─ミルクティーの物語─

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 高校を卒業すると、二人はそれぞれ別の大学に通い始めた。私は薬剤師を目指して都内の大学の薬学部。彼は近郊の国立大学の理学部だった。それぞれ通学先が離れているので、平日は別々に過ごして、週末になるとデートに出かける日常。  会う時は嬉しかったけれど、2年目になると次第に違和感を感じるようになってきた。何が違うのか、説明することはできなかったが、何かが違ってきていた。  違和感を感じるようになったある日、私は一人でこの店に来てカウンターに座った。マスターは黙って、ミルクティーを出してくれる。 「なんか、疲れてきちゃった」 「そうですか。そんな時もあるものですね」 「何か不満があるわけじゃないの。彼はよくしてくれるし、優しいし。でも二人でいても寂しいことがあって。私一人がぽつんと座っているような感じ」 「何か、相手の方には、悩み事があるのかもしれませんね」 「悩み事……?」  そんなことは考えたこともなかった。自分が感じる違和感や自分が感じる孤独感ばかりで、相手が何を考えているかなんて想像できなかった。 「まあ、年寄りの思い過ごしかもしれませんがね」 「ありがとうございます」  すぐに彼にメールを送る。 『今度の土曜日、久しぶりに地元のあのカフェに行かない?』  しばらくして届いた返事は、彼らしくシンプルだった。 『懐かしいな。いいよ』
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