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週末のカフェは、いつものように混んでいた。壁際のテーブルに向かい合って座り、いつものミルクティーを頼む。彼もいつも通り、ブレンドコーヒー。
「高校を卒業して以来か、ここに来るの」
「一緒に来るのはそうね。私は一人で、ちょくちょく来てたけど」
「そうなんだ。好きだね」
ふっと笑う顔は、高校生の時と変わらず素敵。でも素に戻った時の目元が寂しい。
「ねえ。何か悩んでいることは無い?」
マスターの受け売り。
「え、悩んでいること?」
「そう。最近、一緒にいても、何か心ここにあらずって感じがする」
これは本当に感じていること。
彼は少しの間、黙ったまま手元のカップを見ていた。
「君にはかなわないな。当たりだよ」
「……」
「実は、大学をやめようかと思ってる」
「どうして?」
「海外に行って、やりたいことがあるんだ」
「何をするの?」
今まで聞いたことがなかった。そんなことを考えていたなんて。
「一緒にプログラムを開発しているグループの人が、シリコンバレーで会社を起こすことになったんだ。出資してくれる投資家が見つかって、資金が確保できたからって。卒業まで待たずに、その会社で一緒に働かないかって誘われてる」
彼が、プログラミングを趣味でやっていることは聞いていた。海外の人ともネットワークでつながって仕事をしているのが楽しい、とも。でも自身が海外に行くなんて。しかも卒業も待たずに。
「本気、なの?」
「……悩んでる」
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