約束の3年 ─ミルクティーの物語─

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 週末のカフェは、いつものように混んでいた。壁際のテーブルに向かい合って座り、いつものミルクティーを頼む。彼もいつも通り、ブレンドコーヒー。 「高校を卒業して以来か、ここに来るの」 「一緒に来るのはそうね。私は一人で、ちょくちょく来てたけど」 「そうなんだ。好きだね」  ふっと笑う顔は、高校生の時と変わらず素敵。でも素に戻った時の目元が寂しい。 「ねえ。何か悩んでいることは無い?」  マスターの受け売り。 「え、悩んでいること?」 「そう。最近、一緒にいても、何か心ここにあらずって感じがする」  これは本当に感じていること。  彼は少しの間、黙ったまま手元のカップを見ていた。 「君にはかなわないな。当たりだよ」 「……」 「実は、大学をやめようかと思ってる」 「どうして?」 「海外に行って、やりたいことがあるんだ」 「何をするの?」  今まで聞いたことがなかった。そんなことを考えていたなんて。 「一緒にプログラムを開発しているグループの人が、シリコンバレーで会社を起こすことになったんだ。出資してくれる投資家が見つかって、資金が確保できたからって。卒業まで待たずに、その会社で一緒に働かないかって誘われてる」  彼が、プログラミングを趣味でやっていることは聞いていた。海外の人ともネットワークでつながって仕事をしているのが楽しい、とも。でも自身が海外に行くなんて。しかも卒業も待たずに。 「本気、なの?」 「……悩んでる」
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