約束の3年 ─ミルクティーの物語─

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 私は、何と言ってあげるべきなんだろう。『がんばれ。挑戦しておいで』と後押しする? それとも『私のことはどうなるの』と泣きつく?  どちらも違う。 「大学は卒業しないで、本当にいいの?」 「僕の専攻の地球物理学は、このまま卒業しても就職口なんて無いし。大学院に行って研究者になるのも狭き門だから。それよりは、今面白いことに挑戦してお金がもらえるのなら、そっちの方がリスクが少ないと思う」  言うことが理系だ。 「向こうに行ったら、もう戻ってこないの?」 「数年は、その会社で頑張っていくことになる。うまく行って会社が成長していけば、ずっとかもしれないし。もし潰れちゃったら、帰ってくるかもしれない」  もう結論は出てるじゃない。何を悩んでいるの。  次が最後の質問。これは、聞くべきか、聞いてはいけないのか。踏み絵を迫るようで言い出すのが怖かった。  私は、彼には本当にやりたいことをやって、幸せになってほしかった。その側に私もいられたら、どんなに幸せだろうと、ぼんやり考えていた。でも、彼の幸せの中に、私のいる余地はあるの? 私にその勇気はある? 「向こうに行くとしたら、私はどうすればいい? ううん。どうしたい?」  彼の表情が曇った。私は涙をこらえるのがやっとだった。
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