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「君とは一緒にいたい。だけど君には君の夢があって大学に進んだんだから、それを諦めてついてきて欲しい、なんて言えない」
薬剤師になるのは、ずっと夢だった。それは彼もよく知っている。そのためには薬学部で6年間勉強して、国家試験に合格しないといけない。
「だから卒業して資格をとるまで、君は君の道を進んでほしい」
「それは、あと5年遠距離で頑張ろうってことね」
「いや。違う」
彼はさらに暗い顔になった。
「もう、別れよう」
「……」
「これから5年、多分日本に帰ってくることも、ほとんどできないと思う」
「……」
「そんなに長い間、僕の身勝手で君を無為に拘束し続けるなんて、良くない。君はもっと幸せになるべきだ」
とめどなく涙がこぼれ続けた。やっぱりこうなってしまった。
「さっき、その会社が潰れたら日本に帰って来るって言ったよね」
「ああ」
「どのくらいで結果が出るの?」
「3年やってダメだったら、資金が持たなくなると思う」
「じゃあ、3年間待つ。それで潰れて帰ってきたら、また日本で私とやり直そう。順調に成功し続けてたら、きっぱり諦める」
支離滅裂な条件なのは、自分でもわかっている。でも彼とのつながりを残すには、これしか無かった。
「なんだその条件。成功したら君と別れる。失敗したら会社を失うけど君の元に帰る。まるで君のために失敗することを約束させられているみたいじゃないか」
「そんなことはないよ。成功するために全力で頑張って。全力で戦って、トップを目指してくれなきゃ、離ればなれで過ごす意味が無いじゃない」
「よくわからないけど、それが君の希望なんだね」
「そうよ」
彼は私との約束を持って渡米した。
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