約束の3年 ─ミルクティーの物語─

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 このカフェに来るようになって、どのくらい経つだろう。  初めて来たのは高校1年の時だったから、もう10年以上前になる。その時付き合っていた彼と一緒に、どきどきしながら入った。彼はブラックコーヒーを飲んでいたけれど、きっと無理していた。私は、コーヒーなんて飲めなかったからミルクティー。  大人になり、別の人と結婚して子供も生まれた。赤ん坊を連れていると、泣き出したらどうしようとか、おむつを交換する場所があるかとか、気になることが多過ぎて、行ける場所が限られてしまうけれど、このお店にはずっと来ている。  子供がぐずり始めると、マスターは奥の小部屋に案内してくれる。おむつ交換でも授乳でも、自由に使ってもらっていいですよ、と。大きなショッピングモールなら当たり前になってきたけれど、小さな街のカフェでそんなことができるのは本当に貴重。  おかげで子供も、すやすや安心して寝ているし、私もゆっくり羽を伸ばすことができる。  隣の席の高校生は、さっきからずっと見つめあってニヤニヤしている。私も10年前はあんなだったのかな。  当時撮ったプリは全部捨ててしまったけれど、一枚だけスマホの写真にしてとってある。彼と初めてデートした時に撮った、自分史上最高の一枚。大学生になってメイクや加工を覚えて、綺麗な写真はいくらでもあるけれど、あんなに嬉しさがあふれている笑顔は、二度とできなかった。
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