12話 華ちゃんvsちーちゃん

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「ほら、おべんとー」 「華、ちゃん……?」 「つか、財布も置いてなにしてんの? きみは子・ど・も・な・のぉ〜?」  華子はぐりぐりと弁当箱の角を可波の頬に押し当てた。  バツの悪い可波はされるがままである。  二人のペースに呆気に取られていた女子たちだが、ハッとした千織が果敢に口を挟んだ。 「あの、もしかして……。泥酔のはす、さん?」  ジロリと華子がガラの悪い視線を向ける。  しかし千織は気にする様子もなく、アイドルのように目を輝かせた。 「初めまして! あたしたち可波くんと同じ大学なんです。泥酔さんのこともよく聞いていて、一度会いたかったんですよ!」 「千織そんなこと言ってたっけ?」 「里香やめなって」  女子たちを一瞥して、華子は可波へ軽蔑したような視線を送る。 「おまえ、あたしのことなんて言ってんの? つか女しか友だちいない系?」 「女の子だけなのは偶然。今日はちーちゃんの友だちが来れなくなったから、代理で来たんだよ」 「“ちーちゃん”?」  華子が声を低くして、名前を反復した。  ここだとばかりに、千織がずいっと前のめりに手を上げる。 「あたしが千織です。可波くんとはとーっても仲良しなんですよ♡」 「さっき可波に“あーん”を拒否られてたじゃん」 「て、照れてるだけだよね? 可波くんっ」 「え、えっと?」  今までに経験したことのない不穏な空気。可波は本能的に、じりじりとピクニックシートの端へと後ずさっていった。
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