12話 華ちゃんvsちーちゃん

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「はあああーーーーーーーっ!!」  馬鹿デカい華子のため息に、可波はビクッと身を震わせた。  華子はゆっくりと顔を上げて。 「……お腹すいた。これ食べていい?」  やる気なさげに、手に下げた弁当箱をぶらぶらとさせた。 「あれ、華ちゃんごはんは? 作って書き置きもしたのに見てない?」 「誰かさんのせいで、急いで家を出てきたから食べてない」 「それはごめんだけど……」  二人の同棲カップルのような会話に、千織たちは顔を見合わせる。 「つーわけで、おじゃましまーす」  そう言うと、華子は可波と千織の間に割って入った。  そして千織に見せつけるように、ぴとっと可波にくっついて座る。 「かなみん食べさせて」 「なんでだよっ」  間髪入れず、可波がつっこむ。同級生の視線が痛い。 「箸、一膳しかないもん」 「交互で使えばいいじゃん」 「じゃあなんで、きみは隣の女の子に食べさせてもらってたのかなぁ」 「っ!」  可波は真っ赤になって顔をそむける。  華子に見られていたのは普通に恥ずかしかった。 「……はあ。ほら、どれ?」 「あ、そっちのちくわがいい」  観念してちくわをつまむと、ぽいっと華子の口に放り込む。  なぜ、親鳥の気分を味わわなければ。 「いや普通に馴染んでるけど……。泥酔さんー、今ウチらボランティア中で、遊びに来てるんじゃないんですけど?」  里香が、嫌味を含んだ声音で華子を牽制した。  華子は食べ物をゆっくりと咀嚼し飲み込んでから、里香を真っ直ぐに見据えた。  そしてあごを上げ、目を細めて。 「じゃ、あたしもボランティアするわ」 「「ええ……」」  示し合わせたように、全員の嘆声がこぼれた。
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