13話 きみがクジラなら、僕はフジツボで

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 引っ越してきて、テレビの集金以外で初めて家のインターホンが鳴ったかもしれない。  早朝にも関わらずしつこいチャイムに根負けし、可波は布団から這い出した。  玄関を開ける前からだいたい予想はついていたけれど……。 「おはよー、かなみん!」 「おはよう華ちゃん。早いねー」  あくびが漏れる。多分まだ7時そこらだったはず。  夜型の華子がこの時間にパジャマ姿ではなく、髪も服もキメているという事実が信じられない。もしかしたら夢を見ているのかも。と、ひとつの可能性が浮かぶ。  でも一応、聞いてみることに。 「今日は華ちゃんオフだよね。なんで起きてるの?」 「オフだからだよ。遊ぼ!」  遊びに来た小学生かーい。  華子が休みということは、もちろん可波のバイトも休みである。  久しぶりの終日休み。  千織のことも考えたいし、ひとりでゆっくりと過ごそうと思っていたけれど、特に予定のない可波に毎度のことながら選択権はなかった。
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