14話 華ちゃんがスランプです

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  ◆◇◆◇◆◇ 「可波くん、先どーぞっ」 「んっ」  千織が隣で歩く可波に、アイスクリームが乗ったスプーンを差し出した。  可波はそれが垂れる前に、腰をかがめてぱくつく。  一体二人が何をしているのかというと、完全に見たままの通り、食べ歩きスイーツデートである。  アイスの前には大きないちごが4つ串に刺さったいちご飴も分けあって食べたし、先ほど購入したかわいいパウチに入ったジュースは、首からぶら下げている。  千織はそれを持って、ツーショットの写真をSNSのストーリーに上げていた。  まごうことなき、リア充大学生のお手本のような映えデート。 「んー、おいしーね!」 「あっ……」  千織がアイスのスプーンを迷わず自分の口に入れた。  関節キスなんですけど……。と可波はソワソワするが、彼女は気にしていないようだ。  それだけではない。 「今日はデートだし、可波くんとおそろいになるかなってパーカ着てきたんだけど、当たりで良かった!」  そう言ってくるりとその場で回って見せる千織は、ウニクロのパーカと黒のロングブーツのみの、ワンツーコーデ。  お尻が見えそうな丈で、余計にソワソワが止まらない。いや、下にはいてるんでしょうけど。  火事のあと、服はウニクロで揃えていた可波だったが、バッチリと手持ちの服が把握されていたのも恥ずかしかった。 (デートかぁ……)  隣で歩くペアルックの女の子に告白されて数日が経過していたが、可波はまだ返事を出せずにいた。  「とりあえずデートしない?」と誘ったのは千織から。  それに可波も乗り、時間を合わせて本日出かけることに。  今回のコリアンタウンは、誘った千織が選んだ。  まかせっきりで申し訳なさげな可波に「じゃあ第二回は、可波くんがプラン考えてね♡」と言える千織は、とてもいい子である。
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