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さてをおく。
「かわいー! ピンクがいいかな。エメラルドも捨てがたい〜!」
気づけば千織は、マカロン店のショーケースの前に張り付いてはしゃいでいた。
「ね、可波くんはどれがいい?」
あまりにも自然体すぎる彼女を見ていると、可波の緊張も、笑顔とともにこぼれていくのがわかった。
「ちーちゃん、ちょっとこっちおいで?」
「なになに?」
小走りで駆け寄ってきた千織の顔に、可波は優しく手を添えた。
不意打ちに目をぱちくりとさせている彼女に構わず、頬についた緑色のアイスを親指で拭う。
「アイス、そんなおいしかった?」
「……うそお!?」
笑いをこらえる可波を見て、ぽやーっとしていた千織は我に返った。
真っ白な顔のせいで、暖色に変わるのがとてもわかりやすい。
「やだ、恥ずかしいんだけどー!!」
千織は顔を隠そうとして、とっさに可波の胸元に額をつける。
「あはは。もう取れてるよ」
「うー、ほんと? 手汚れちゃったね、ハンカチ使って」
日本人離れした茶系の瞳がチラリと見上げてくる。控えめに言っても超天使である。
けれど、そんな至近距離で女の子と見つめ合えるほど可波も手練てはない。
「大丈夫、慣れてるから〜」
よくわからない返答をして、そそくさと視線を外した。同時に半身を引いて、体を離す。
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