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「てか、ちーちゃんてスイーツも結構食べるんだね、ちょっと意外」
「そーかな? 私、自分でも作るし。ごはんも甘いものも好きだよ」
千織が差し出したアイスのカップを可波は受け取り、今度は自分でスプーンですくって口に運ぶ。
「美味しいもの食べると『幸せ♡』って感じるんだ。だから、可波くんにも幸せな気分になってもらえたらって、デートを食べ歩きにしたんだよ」
そう言って、千織は可波に腕を絡ませた。
アイスを持っている可波は動けず、筋肉をこわばらせて千織を見下ろした。
「デートだし、いいよね?」
前を向いた千織の表情はよく見えなかったけれど、耳は真っ赤になっていた。
千織はとても素直でかわいい。
可波のためにと選んでくれたデートプランもうれしいし、なにをしても平和で、のんびりしていて、甘い時間だった。
それなのに……。
なぜか、さっきからアイスの味がよくわからなかった。
ぎしりと小さな違和感が胸を締め付ける。
いつもだったら口から適当にこぼれる雑談も、胃の奥に引っかかってしまったように全く出てこない。
テンションを入れるリモコンは、どこかに置き忘れている気分だった。
突然、千織が立ち止まった。
そのため、自動的に可波も歩行を停止する。
「? ちーちゃん?」
「すみません、彼氏さんもご協力お願いしていいですかー?」
見ると、マイクを持った人とテレビカメラを背負った人が、千織を引き留めていた。
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