14話 華ちゃんがスランプです

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 君取からの着信のはずが、耳元で聞こえてくるのは華子の声。  混乱した可波は問いかけた。 「え、なに、どういうこと?」 『今日あたし、ゼップのゲストで出てるんですけど。さっきの生放送なに? ていうか、知らなかったんですけどぉ。「せーの、ゼップ♡」って楽しそうでしたねえ』 「えっと……」  絶好調な華子の声色に、可波の背筋は凍りつく。 『先生! 生放送ですよ!? CM明けますから、戻ってください!!』 『うっさい、生放送にあたしをブッキングする局が悪いんだよ。あっ、こら、電話返せっ!!』 「あ」  ぶつり、と電話が切れた。  放心していると、トントンと控えめに腕をつつかれた。  慌てて千織が隣にいることを思い出す。 「電話、泥酔さん?」 「あ、うん。びっくりしたぁ」 「プライベートのことまで言われるんだ?」 「うーん、たまたまだと思うけど」 「……ボランティアも追いかけてきてたよね。それもたまたまなの?」  千織が、らしくない声を上げた。  それに自分でも気づいたようで、気まずそうに視線を落とす。 「可波くん、今日もちょくちょく上の空だったよね。またバイトのこと考えてた?」  絡んでいた腕が離れた。  デートに集中していなかったのがバレていた。  気づいていたのに言わず、ずっと笑顔でいてくれた彼女のことを思うと、さすがに罪悪感で苦しくなり可波は謝罪した。 「ごめん。そうだったかも」 「なんで?」 「なんで……。今のライフワークだから……」  答えてから気づいてしまった。  違う、そうじゃない。  一気に血の気が引いていく。  千織とのデートを、華子といるときと無意識に比べていた自分に。
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