14話 華ちゃんがスランプです

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「今日は、私とのデートなんだよ」 「そうだよね……」 「バイトバイトバイトって、可波くんずっとバイトのことばっか。もっと私のこととか……自分のことも考えてよ!」  寒さだけじゃない要因が、彼女の頬に赤みを与える。  ゼリーのように潤んだ瞳が真っ直ぐに向けられて、目をそらせない。  千織がデートの態度のことだけを言っているのではなく、可波がバイトに依存しないように、純粋に心配してくれているのがわかるから。  ――謝らなきゃ。  だけど、どう伝えれば彼女が傷つかないだろうか。  そればかりが頭をぐるぐると巡り、なかなか言葉として出てこない。 「私って、そんなに魅力ないのかなぁ」  黙っている可波に、もう一歩、千織が踏み込む。 「私、可波くんに告白したよね? そんな相手と一緒にいるのに、他のこととか考えるかな?」 「ごめ……」 「もういい」  千織は可波をにらみつけて、離れた。  目元を濡らしていたが、彼女はそれをこぼすことなく。 「今日は帰るね。さよなら」  そう言って、きびすを返してひとりで歩いて行く。  可波はそんな彼女を呼び止めることができなくて。  新大久保の裏路地の真ん中で立ち尽くしていた。
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