14話 華ちゃんがスランプです

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…… ………… ………………  不貞腐れていた華子は、玄関ドアが閉まる音を聞いてのそりと体を起こし、ノートパソコンを手元に引いた。  画面はSNSを開いた状態だった。  華子は泣き腫らして重いまぶたを半分開けて、呆然と画面を見つめる。  サーチワードは「泥酔のはす」。  エゴサーチの最新結果に『痛い』や『頭おかしい』などのワードは前から出てきてはいたが、最近は『勢いがなくなった』『つまらない』などの批判も増えていた。  顔出しをしてアダルト関係の仕事をし、配信で炎上もしていればアンチも多い。  ネットでは擁護よりも、叩かれることや煽られることがほとんどだ。  それを毎日毎日浴びていて、普通の人間なら心が保つはずがない。  だから今まで「泥酔のはす」という衣をまとって、自分の心を切り離していたのだ。  それなのに――。  最近、心がざわついている。 「お姉ちゃんみたいになりたい!」  純粋な子どもの目が忘れられない。 「華ちゃんは華ちゃんだよ」  信じてくれているあいつのことだって。  ――土塔可波。  彼が来てから、少しずつ華子は自分が変わっていくのを感じていた。  むくむくと、自分の中に鍵をかけて閉じ込めていた結野(ゆいの)華子(はなこ)が、声を上げ始めている。  それは自分(のはす)にとっては良くないことで。  できれば一生出てこないでいて欲しかった。  素の自分(結野華子)を抑えながら批判を浴びれば、今まで平気だった言葉も、致命傷とまでいかずとも、心に引っ掻き傷をつけていく。 「ううっ、ワーグナー……ワーグナー、助けて……」  素なんて押し込めたかった。  けれど、そう思っているということは、すでに手遅れだ。  華子として扱われるようになったときから、少しずつメッキがはがれていたのだから。
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