19人が本棚に入れています
本棚に追加
泥酔のはすの衣はほとんど消えてしまっていた。
自分が自分であることを許されて、自然と受け入れてしまったせいだ。
それにおけるメンタル崩壊の覚悟はしていたのに、思ったよりも精神的に来た。
とどめの一撃は間違いなく、可波と千織のツーショットだ。
「ああ、ダメだ…………好き、なんだ、あたし……っ」
ぽつりと、言葉とともに涙がこぼれた。
みっともなくて、惨めで、手が震える。
こんな、人として終わってる自分なんて、恋をする資格ないのに。
しかもずいぶん年下の男子にいったよな、おい。
一昨日VTRで見た、可波と千織が並ぶ姿が似合いすぎて、嫉妬で焼け狂いそうだった。
「おえっ、ごほっ! げほっ! げほっ!! ううぉ……死にてぇ……」
自分への嫌悪感が、胃からせり上がって外に出た。
肩で息をしながら、床に広がる汚ないそれをぼんやりと見つめる。
ワルキューレの騎行が部屋に響く。
「人を好きになって、メンタル死ぬとか。マジで人間のバグだろ、最悪……」
他人から見えている自分と、自分が認識している自分。
その乖離が激しくて気持ちが混濁している。
ガラガラと心の要塞が崩れていくのを、ただ黙って見過ごすしかない。
「もーやだ。できないよ。つらいよ、ぜんぜん楽しくないよぉ〜」
ソファに顔を埋めて、華子は子どものように泣き叫んだ。
ワルキューレの騎行は、夜更けまでループし続ける。
最初のコメントを投稿しよう!