14話 華ちゃんがスランプです

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 しばらく学校で目も合わせてくれなかった彼女とは、約一週間ぶりの会話だ。  少しだけ体をこわばらせ、可波は口を開く。 「病院を探していて」 「そっか。……タウンページって初めて見たけど、重そうだね……。私も探すの手伝うよ」  わずかに顔をしかめたあと、千織は可波の隣に座ってスマホをつけた。  いつもと変わらず接してくれる千織の態度に、可波はホッと胸を撫で下ろす。  ただ、彼女から舌ったらずさが消え、淡々とした喋り方に変わっていたのだけれど。可波が気づく余裕はなかった。 「可波くん、どこか悪いの?」 「いや僕じゃなくて。華ちゃんが、全然書けなくなって。心療内科?を見ていて……」  一瞬、千織の手がピタリと止まった。  可波は失言したかと怯えたが、千織はスマホから目を離さずにすまし顔で答える。 「……でも、心療内科って予約取れても3カ月後とかだって聞いたことあるよ」 「そうなの?」  なるはやでなんとかしたいのに、なんてことだ。  すぐ病院に頼れないなら、この案は終了である。早速行き詰まりを感じてしまう可波だった。 「メンタルケアまでやるんだ? バイト大変だね」 「うーん。僕には合ってると思ったんだけど、確かに書いてくれなくなってからはちょっと大変かもしれない」  このバイトを始めて、いろんな人に「大変そう」と言われてきたけど、初めてそう思ったかもしれない。  可波は空を見上げて少し考えた。そして。 「ちーちゃん、よかったら場所変えて話さない?」  華子のこともだけど、千織のことも。  このままにしておけないと思っていたので。
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