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「こっち向いて。えーやだぁ♡ かわいいー♡」
白やらピンクやら黄緑やら……目がチカチカする色のワッフルパフェを持たされ、さらにポーズまで指定されて可波は顔を引きつらせた。
向かいの席では、千織が満面の笑みを浮かべてスマホを向けている。
「わーい、私も撮ろっと。可波くんも入ってるから顔作ってねっ」
「顔を作る?」
「これ、インスタのストーリーに載せてもいい?」
「インスタのすとーりー?」
アイスが溶けるまでパシャパシャやって、千織は満足したようだ。
「それで話ってなに」
スッと表情が引いて真顔になる。
めちゃくちゃ怖かった。
千織に連れてこられた「ネオ韓国カフェ」は、女子のお客さんだらけで、まあまあの声量が飛び交っている。
さらに目の前には仏頂面さんがお鎮座。
落ち着かなさを感じながら、可波は頭を下げる。
「ちーちゃん、ごめん」
千織は何も言わず、ブラックコーヒーに口をつけている。
「あんな終わり方は嫌だなと思って。ちーちゃんとはこれからも仲良くしたいから。……大事な友だちとして」
「……なんだ、そーゆうこと」
千織がコーヒーを机に置いた。
反射的に、可波は背筋を伸ばす。
「そーいうの、わざわざ呼び出して言うことじゃなくない? ちょっと期待しちゃったんだけど」
「ご、ごめん」
「まったく、可波くんってほんと人の気持ちに鈍いんだから」
ため息をひとつついて、千織は口を尖らせた。
「……せっかくだから、どうしてダメなのか聞いてもいい?」
可波は手付かずのコーヒーの表面を見つめた。
少し考えて、覚悟を決める。
「僕はちーちゃんが思っているよりも打算的だと思う」
「……どういうこと?」
「うん。高校時代に告白してくれた後輩と付き合ったことがあるんだけど、好奇心を満たしたいだけで、彼女を見ようとしなかった」
「えっ、えっ?」
彼女は可波のことを知らない。少なくても、そういう妙なことを言うような人間だとは、今の今まで思っていなかったのだろう。
千織は激しくまばたきをして、眉間に皺を寄せていた。
できれば可波も言いたくなかった。
彼女には、自分の嫌な部分を見せたくなかった。
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