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「今の気持ちだと、同じことの繰り返しになる。ちーちゃんは、ぼんやりしていた僕にもみんなと同じように話しかけてくれた子だから。大事にしたい」
「なにそれ。意味わかんない……」
「だよねぇ」
愕然として、千織はうつむく。
「……可波くんは、泥酔さんが好きなの?」
「そういう理由じゃないよ。僕自身の問題だから」
「だったら、もし私を利用するのだとしても、一緒にいられるだけでいいんだけどなぁ」
「……ちーちゃん」
千織は顔を隠すように萌え袖で肘をついて、窓の外へと視線を移した。
長い間、無言だった。
彼女が泣くことも覚悟をしていたけれど、千織は耐えていた。
自分が泣くと、可波が辛くなると思ったからだろう。
そんな子だから。
絶対に。これ以上、傷つけたくない。
窓の外で山手線が10本ほど通り過ぎてから、千織の視線が戻ってきた。
もう目に涙はにじんでいなかった。
「――わかった、納得することにする。だからもうこの話は終わりね! じゃあそっちの話、聞いてあげるよ。泥酔さんどうしたの? 鬱なの?」
「……えっ?」
何を言っているのだろうか。と、可波が驚いて言葉を失っていると、複雑そうな表情で腕組みをした千織は、
「私、困ってる人を放っておけないタイプだから」
そう言って、椅子に背中を預けた。
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