14話 華ちゃんがスランプです

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 華子は伸ばした週末の締め切りも反故に(ブッチ)して、逃走はしないが開き直って自室に鍵をかけて閉じこもってしまった。  今までは急に爆発しても、どこかに連れて行けばなんとかおさまっていたし、話を聞いたりごはんを食べさせたりすれば、少しは落ち着いていた。  それに、可波にそばで監視して欲しいと彼女が言っていたのに。  急に可波も君取も根こそぎで拒絶するものだから、一体どう接していいのかお手上げ状態になっている。  ……ということを、可波は戸惑いながらも一気に話して肩を落とした。 「急に、華ちゃんのことがわからなくなったかも」 「ふぅん。急にわからなくなった、ねぇ……」  千織が可波のつぶやきを拾い上げる。 「ねえそれ、可波くんもそうじゃない。相手に見せていない部分があったってだけでしょ」  千織の言葉に、可波は弾かれるように顔を上げた。 「私だって可波くんに見せてない部分あるし」 「え」 「私があざといのも、ぜんっぶ計算だからね?」  机の上に、千織が身を乗り出す。 「この前私のこと『意外に食べる』って言ったよね? 体型維持だって、見えないところで死ぬほどがんばってるの! いつもこんなの食べてたらすぐ太るよ。だけど、好きな人にかわいく思ってもらいたいから、その一心で笑顔でスイーツ食べてるんだよっ!? もー、これは可波くんが食べてよねっ!!」  まだ一口も手をつけていない溶けたワッフルパフェを、ずいっと目の前によこされた。  可波もすでに限界だった……が、そんな弱音は受け入れられそうな雰囲気ではない。  無言で、自分の前にそれを引き寄せた。  心していただきます。
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