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雨がカフェの窓を叩いて、傘を持っていない二人は慌てて解散した。
電車に乗っていると、雨の威力がどんどん強まっていった。
最寄駅に降りたときにはもう本降りだった。コンビニでビニ傘を買うか少し悩んだけど、走って帰ることにした。
自分の部屋で体を拭いて着替えてから、華子の部屋にお邪魔する。
真っ暗な玄関を通ってリビングに入ると、珍しく人の気配がした。
髪を下ろし、パジャマ姿の華子が、ソファに座っていた。
そばには数本、ストゼロが転がっている。
「華ちゃん」
呼びかけると、うつろな表情で華子が可波を見た。
助けを求めるように瞳を濡らし、唇を震わせる。
「カナミ……ごめん、進んでない」
彼女の口から出たのは、怒りでも保身でもないそんな言葉だった。
「華ちゃん」
もっと本音で話してくれてもいいのに。
急に距離が開いた気がして、可波はそれが悔しかった。
「ちょっと休んだら元気になったから。がんばる……」
そうは言うけれど、身体も心もガタガタの彼女を見ていると、できるとは思えない。
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