15話 僕はきみの夢を諦めない

3/11
前へ
/164ページ
次へ
「さっき、事務所にすげー怒られた。カナミも言われたんでしょ。ごめん、あたしがサボってたせいで迷惑かけて」  服の袖で目元を拭って、華子は立ち上がった。  ろくに食事もしていないのか、寝ていないのか。ふらついて倒れそうになところに駆け寄って支える。 「華ちゃん……もう、書かなくていいよ」  腕の中で華子がぴくりと動いた。  だいぶ痩せている。不安になるほど体が薄い。 「書きたくないものを、書くのはやめよっか」  表情は見えない。けど、戸惑っているのか華子は黙り込む。 「これからは本当に書きたいもの書いてみよう」 「本当に(・・・)? ……そんなものないから」  自嘲するように、華子は否定した。  でも可波は、それが嘘だということを、もう知っている。 「本当は、小説家になりたいんでしょ」 「っ!?」  どこにそんな力が残っていたのか。  強く突き飛ばされて、可波はよろけた。  華子はすっかりと窪んでしまった目で、恐ろしげに可波を見つめていた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加