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「さっき、事務所にすげー怒られた。カナミも言われたんでしょ。ごめん、あたしがサボってたせいで迷惑かけて」
服の袖で目元を拭って、華子は立ち上がった。
ろくに食事もしていないのか、寝ていないのか。ふらついて倒れそうになところに駆け寄って支える。
「華ちゃん……もう、書かなくていいよ」
腕の中で華子がぴくりと動いた。
だいぶ痩せている。不安になるほど体が薄い。
「書きたくないものを、書くのはやめよっか」
表情は見えない。けど、戸惑っているのか華子は黙り込む。
「これからは本当に書きたいもの書いてみよう」
「本当に? ……そんなものないから」
自嘲するように、華子は否定した。
でも可波は、それが嘘だということを、もう知っている。
「本当は、小説家になりたいんでしょ」
「っ!?」
どこにそんな力が残っていたのか。
強く突き飛ばされて、可波はよろけた。
華子はすっかりと窪んでしまった目で、恐ろしげに可波を見つめていた。
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