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カフェで、千織に頼んで華子の記事を見直すことにした。
今の記事は、本人が言うようにアダルト系の記事タイトルばかり並んでいた。
千織はそれを見て「本名で探してみたら、裏サイトとかあるかも?」と提案。検索は『泥酔のはす』ではなく、『結野華子』に。
そこで出てきたのは、7年前のブログだった。
それは、彼女が可波と同じ年齢のときに書いていたもの。
それは、胸を締め付けるほど優しい言葉でつづられた物語だった。
可波は本棚に視線を走らせる。
「! やめてっ!!」
華子も気づいて手を伸ばすが、可波のほうが少し早かった。
本棚から以前「門外不出」と言われたファイルを抜き取ると、邪魔されないよう彼女に背中を向けて開く。
「……やっぱり。プロットだったんだ」
仕事のプロットを必ず手書きする彼女は、自分の小説のプロットも手書きし、ファイルで保管していたのだ。
「返して!」
可波からファイルをひったくるがもう遅い。
「書きたいんでしょ、本当はこういうお話が。だったら書こうよ。自分を偽るのがつらかったんでしょ」
「ねえ、まじでなんなの……。やめて、関係ないじゃん」
可波に背中を向けた華子は、絞り出すように声を出した。
「泥酔のはす先生」
「あ……」
くるりと振り返った顔は、絶望の色で染まっていた。
「な、んで急にそう呼ぶの……? やだ……」
今にも泣き出しそうな表情で、責めるようにつぶやく。
けれど可波は、彼女との関係を疎遠にするためにそう呼んだわけではない。
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