15話 僕はきみの夢を諦めない

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 再び地面に視線を落として、手を伸ばした。 「いや、だからもういいって。やめて、カナミ。風邪ひくからっ」  拾う紙はどれもよくふやけていた。  水溜りの中に落ちたものも、手を突っ込んで拾う。  諦めない。  彼女が紡ぐ優しい言葉を、冷たい場所から救いたかった。 「華ちゃんが諦めても僕は諦めない。何度だって書けって言うよ。華ちゃんが嫌がっても、華ちゃんに嫌われても、絶対に」  華子がさしてくれる傘は意味をなさず、可波は横降りの雨に襲われる。  そうしているうちに、半分以上は回収できた。  あとは植栽に引っかかっているものだけ。可波は木の下へと走る。 「もうやだ! どうしてだよ。本人がもう興味ないって、やらないって言ってるじゃん!」 「華ちゃんは、そうした方がいいから」 「なにそれ、答えになってない!」  可波は水撒き用のホースリールに足をかけた。  プラスチックのリールも、おしゃれな植栽も、可波の体重を支えるほど丈夫ではない。  すぐに不安定な足場がグラグラと揺れた。 「カナミ、もうやめて!!」 「……あ」  転びそうになった可波の後ろから、華子がしがみついた。  ホースリールだけ横転し、二人は植栽の下で立ち尽くす。 「無茶なことはやめてよ……」  いつの間にか傘を手放していた華子も、しっかりと雨に打たれていた。 「書く……からぁ……」  涙と雨でぐちゃぐちゃになった顔で。 「だから、もう拾わなくていいっ!」  懇願だった。  それでも可波は諦めきれず、視線は植栽の上へと向けていた。 「でも、これがないと……」 「もう拾っても、そんなに濡れていたら文字なんて読めないんだってば!!」 「っ!」  本当は拾っている途中で気づいていた。  けれど、見ないフリをしていた。  努力は必ず報われる――くだらない幻想にすがるしかなかった。 「意味、ないんだよ……カナミ」 「……っうう」  現実を突きつけられた可波は、小さくうめいてへたり込んだ。
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