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お互い部屋でシャワーを浴びて、再び華子の家のリビングに集まったのは19時前になっていた。
かなり泣いたし、勢いで好きとか言っちゃったしキスもしてしまった後である。
風呂上がりのラフな格好なんてお互いに見慣れていたはずだけど、なんとなく気恥ずかしくて、二人ともぎくしゃくしてしまう。
「と、とりあえず受けてる仕事は終わらせるね。3時間で出すわ」
「華ちゃん、大丈夫?」
「うん、プロだから。って今さらだよね。信頼はもうないかもだけど、ちゃんと筋は通すよ」
華子は苦笑いを浮かべ、チラと可波をうかがう。
「で、そのあとは……いいの?」
「うん。しばらく新規は受けないように、僕がガードする」
「はあ。カナミぃ、どーなっても知らないからね?」
「いいよ。僕が読みたいものを目の前で書いてもらえるなら、たとえクビになっても悔いはないよ」
「そ」
短く返事すると、華子はパソコンに集中してしまった。
こうなってしまったら話しかけても上の空だ。小さく音楽を流しても邪魔だと怒られる。
カタカタというパソコンの音だけがリビングに響く。
可波は華子の働く姿を、キッチンの掃除をしながら眺めた。
嫌な仕事も我慢してこなさないといけない。
それが普通の社会人の在り方なんだと思う。
だけど彼女には、好きなものを好きに書いてて欲しい。
書くことが好きな気持ちを忘れて欲しくなかった。
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