1話・ホームレスだけどいいですか?

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 そんな悲劇かはたまた喜劇から数時間後。  家なし職なし金もなしの限界大学生・土塔(どとう)可波(かなみ)は、近所の公園のベンチに寝転がっていた。  小高い丘の上にあるため、街が一望できること。そして、人通りも少なく静かなところが、すぐに気に入ってしまった。 「ここをキャンプ地とするか〜」  一度は声に出したい日本語が、誰に聞かれるでもなくむなしく空へと霧散する。  大家さんからジャンジャン鳴る着信を無視して、可波はひとつあくびをした。  それにしても。  暖かい時期で良かったと思う。  冬だったら確実に凍死していただろう。想像するだけで脳天がシビれる。 (……ま。なるようになる……でしょう)  たくさんのものと一度に別れて胸はきゅうっとうずくけれど、反面、少しだけ高揚していた。  なぜなら、今までこんなことはなかった(・・・・・・・・・・・・・)から。  失うものはもうなにもない。無敵な気分。  心地よい初夏の陽気がやさしくまぶたを撫でるのに身を任せて、可波はうとうとと船をこいだ。 「んもーっ! どこっすかーっ!?」  キャンプ地、早々に思ったのと違った。
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