10話・僕はもう、ここにいらないね

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「信じてたのに……」  可波は力任せにパソコンを閉じると、床に座った。 「……人のこと勝手に信じといて、騙されたみたいに言われる筋合いないんだけど。バッカじゃね?」  ソファに寝ころんだ華子と目が合う。 「ほらよく見て。これがあたしなの。ふはっ。締め切りで潰れるような、心が弱い人間でえーっす。勝手に理想を押し付けないでくださーい」  ケラケラ笑って、人差し指で可波のひたいをつつく。  もうだめだと思った。今度こそ、本気で。  悔しさか、失望か憤りか……。どれもうまくハマらない言語化しづらい感情が、胸の真ん中で燃え上がる。  今までの行動とか、全部、見返りを求めていたわけではないけれど。まさか届いてもいなかったなんて。  それはちょっと、あんまりじゃないだろうか。 「……そっか。僕が華ちゃんのプレッシャーになってたんだね」  可波はつぶやくと、ふらりと立ち上がった。  機械のような動きで、リビングに置いていた私物をリュックに次々に詰め込んでいく。  最後、ポケットの中から華子の家の鍵を出して机に置いた。  そこでようやく華子も可波の異変に気づく。  笑うのをやめて、様子を伺おうとわずかに首を伸ばした。
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