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「信じてたのに……」
可波は力任せにパソコンを閉じると、床に座った。
「……人のこと勝手に信じといて、騙されたみたいに言われる筋合いないんだけど。バッカじゃね?」
ソファに寝ころんだ華子と目が合う。
「ほらよく見て。これがあたしなの。ふはっ。締め切りで潰れるような、心が弱い人間でえーっす。勝手に理想を押し付けないでくださーい」
ケラケラ笑って、人差し指で可波のひたいをつつく。
もうだめだと思った。今度こそ、本気で。
悔しさか、失望か憤りか……。どれもうまくハマらない言語化しづらい感情が、胸の真ん中で燃え上がる。
今までの行動とか、全部、見返りを求めていたわけではないけれど。まさか届いてもいなかったなんて。
それはちょっと、あんまりじゃないだろうか。
「……そっか。僕が華ちゃんのプレッシャーになってたんだね」
可波はつぶやくと、ふらりと立ち上がった。
機械のような動きで、リビングに置いていた私物をリュックに次々に詰め込んでいく。
最後、ポケットの中から華子の家の鍵を出して机に置いた。
そこでようやく華子も可波の異変に気づく。
笑うのをやめて、様子を伺おうとわずかに首を伸ばした。
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