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「千織ぃ。うまいことやってるー?」
「あっ、もぉなにーうまいことって!」
後ろから千織にじゃれるように女子ふたりが抱きついた。いつも千織と一緒にいる友人の里香と美々だ。この二人は物語にあまり重要ではないので詳細は省くが、とりま黒ギャルと白ギャルである。
「土塔と一緒に過ごしたいって、ボランティアに誘ったわけじゃんー」
「そうそう、欠員出たって嘘までついて」
「う、うそじゃないもん……」
「別のグループでふたり来れなかったもんねー、結果的に」
「はん♡ 千織がいじらしくてかわいー」
うりうりと白ギャルの美々が頬擦りするのを、千織は真っ赤な顔でされるがままになっていた。
すぐに可波と子どもたちの方が騒がしくなる。
「えっ、ちょ、ま、おおう!?」
「たっくんをはなせ!」
「はなせばかー!」
いつの間にか、可波は大勢の子どもに囲まれていた。
さらに多方向から松ぼっくりを投げつけられている。
「こらきみたち!! 散らかしてどうするんですか! 土塔さんも、大人なんだから子どもたちを注意する側でしょう!? がみがみ!」
がみがみと可波叱りつけるのは、きつそうな印象のメガネのご婦人。彼女がこのボランティアの最高責任者である。
千織はすぐさま可波に駆け寄った。
「大丈夫? 手伝うね」
「うん、ありがと、ちーちゃん」
子どもたちは散り散りに退散し、素知らぬ顔で作業に戻っていた。
可波が恨めし気な視線を送るのを、クスクスと笑っている。
やな小学生だった。
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