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寝起きの華子はあくびをしながら、冷蔵庫の前に立っていた。
扉に貼られた書き置きには、ボランティアに行くため夜に帰るということと、食事についての説明が書いてあった。
背中をぼりぼりとかきながら、ふとキッチンの台に目を移す。
そこに小さな包みが置いてあった。
「あれ。かなみん自分の弁当忘れてんじゃんw でも知ーらねっと」
可波も大学生だしバイト代も出ている。都会は店も多いし、その辺で何か買うだろう。
目をこすりながら、キッチンを通り過ぎる。
ふと、リビングの扉の前に落ちたジップロックが目に入った。
嫌な予感がしながらしゃがんでつまみ上げると、中に1000円札が3枚とカードがいくつか、そして小銭がじゃらっと入っていた。
「……あいつ、財布も持ってないのか?」
顔をしかめる。どんだけドジなんだ。
まあ今どきの大学生だ。pay類でなんとかするだろう。
「……ってあのバカ、ガラケーじゃん!」
時計を見上げる。
10時半。
今から持っていけば、昼には間に合うだろう。
昨夜の雑談で、うっかりボランティア場所を聞いてしまった自分を恨む。
「あーもう、絶対に埋め合わせさせたる!」
華子は可波の弁当と財布を、トートバックにぶちこんだ。
そして洗面所に飛び込む。
どんなに急いでいても、支度はしっかりしたいタイプだった。
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