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「まっさか、土塔くんが一文なしとはねーw」
「千織に感謝しなよ?」
「めんぼくないです……」
「え、いいよいいよ〜。そういうこともあるって。ねっ?」
しょんぼりと肩を落とす可波を、ピクニックシートで隣に座った千織がなぐさめる。
もちろん都内とはいえ廃れた公園、売店なんてものはない。
かろうじて自動販売機を見つけて飲み物を買い(千織に借りた)、丁寧に固辞したけれど、千織のお弁当をわけてもらうことになった可波。
ひとりで活動していたときにはフレンドリーだった別の大学のボランティア男子らには、女子に囲まれた途端にらまれた。
今日は散々だった。
「でもよかった。みんなに味見してもらおうと思って、ちょっと多めに作ってきたんだよね」
そう言ってリュックから取り出したのは、千織の体には少しわんぱくな大きさの弁当箱。
膝の前に置いて蓋を開けると、1.5人分ほどの量のおかずが入っていた。
それを見て、美々が目を丸くする。
「なにこれ! 千織ぃ、すごい! お嫁にきてー!」
「えへへ。考えとく♡」
色とりどりの宝石箱のようなそれとは別に、小さなおにぎりが2つラップで出てきた。
「ごめんね。可波くんには足りないかもしれないけど、おにぎり全部食べてもいいからね。お味噌汁もあるよ」
「って、あんたのカバンは四次元空間かーい」
軽快に里香がツッコんで、笑い声が上がった。
女子三人集まればなんとやらと言うが、空気が華やかだった。
なにしろここまで可波は一言しかしゃべっていない。
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