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天使の像と予言の書
「お父様!これだけは売らないでください!」
私は亡くなった母の形見である、金の天使像を抱えて訴える。
10kg近くあるので、重い。
「しかしデイジー、それを売ればお前はカシェル君がいる学校に入学できるんだ。お前だってカシェル君のそばにいたいだろう?」
お父様は両手を広げ、近づき、私を説得する。
床が、時々キシむ。
確かに、私の“将来”の恋人のカシェルが来年から赴任する学校「フェアリックス学園」は、超が付くほどのお金持ち学校。入学金、5年間の授業料、寮費、寄付金、その他もろもろ一般家庭には到底無理な金額が入学するには必要だ。しかも入学時に一括納付!
由緒ある我がウォーントル家は10年前お母様が亡くなって以降、転がり落ちるかのように没落していった。
お父様が指揮を取った事業は次々に失敗し、我が家の貯蓄はもちろん、家宝や貴重品はあっという間に無くなってしまった。
家宝の中でもダントツで値打ちがあっただろう、この金の天使像を売れば、そのお金を私の5年間の学校生活に充ててもお釣りがくるだろう。
しかし、これはお母様がとても大切にしていたものだ。
母はこの天使の目をとても気に入っていた。
私と同じ、紫の瞳。
天使の瞳はアメジストだろうか。
大粒で、深い紫の艶やかな光沢が神秘的で吸い込まれそうになる。
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