カシェルの過去

3/3
前へ
/144ページ
次へ
 私が生まれ変わったのだ。もしかしたら王妃もどこかで生まれ変わっているかもしれない。最愛の王妃に会えるものなら会いたい!もう一度巡り会いたい!  そんな事を考えながら各国を訪れ、この75年の間の今までの出来事を調べた。  どの文献にも私と王妃の事は記載されておらず、各国の国民にも5人の魔法使いが星の環境を整え、国を作ったと伝えられていた。  銀の魔力さえ私の手元にあれば、過去に戻って真実を知ることができたのに…!  結局わかったのは、私達の存在が歴史上から削除されたという事だけだった。そして王妃の生まれ変わりにも会えぬまま、赤の国の王子としての生涯を閉じた。  次に目覚めた時は、緑の国の王子だった。  また、生まれた時には死んでから50年経っていた。  何故、こうも前世の記憶を持ったまま生まれ変わるのかはわからない。  もう一度王妃に巡り合えば、この転生は終わるのか。  この星の行く末が気になって、永遠に転生し続けるのか。  それとも私を殺した犯人を突き止めれれば、安らかに眠れるのか。  今回の転生も、赤の国の王子の時と同じように王家に縛られる事なく自由に過ごせた。  ただ、その頃にはフェアリックス学園が設立されていたから、20歳まではあまり自由はきかなかった。  そしてまた、前回死んでからの出来事を調べながら王妃の生まれ変わりを探した。そして、紫の瞳の女性に出会った。  白の国の農家の嫁だった。  周りに魔法使いが存在せず、魔法使いの存在も知らないようだったが、ちゃんと紫の瞳の能力を備えていた。  しかし、私のように前世の記憶を引き継いでいるわけではなく、王妃の生まれ変わりというわけでも無さそうだった。  その彼女の能力を試している時に気が付いた。  私は昔の自分の魔力が全ての魔法使いの魔力の大元である為か、今の自分と違う属性の魔力も使いこなせる事を。  そして私の意思で彼女から強制的に魔力を吸い上げる事も可能という事もわかった。  彼女と銀の魔法使いに協力してもらい、なんとか私自身が銀の魔力を保有することに成功した。  そしてこの緑の国の王子の身体でも、銀の魔力を使って過去と現在を行き来することが出来た。  充分に銀の魔力を保有し、私は210年前を目指した。  しかし保有した魔力が少なかった為か、過去に戻ってみると私が前回赤の国の王子として生涯を閉じた80年前の時点までしか戻れなかった。  80年前に戻った時点で私の銀の魔力は底をついてしまったので、元の時代に戻れなくなってしまった。  仕方がないので紫の瞳の女性と王妃の生まれ変わりを探しつつ、緑の魔力で生活をしていこうとしていた矢先、事故で命を落としてしまった。  そして水の国の王子に生まれ変わり、同じように各国の歴史を調べ、そのまま生涯を閉じた。  ただその時は、紫の瞳の女の子が白の国に何十年かに1人生まれていることを知り得た。  次生まれ変わった時には、青の国の王子として…カシェルとして生まれた。  最初のが殺されて、400年の年月が経っていた。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加