78人が本棚に入れています
本棚に追加
信頼関係
「そして君を…デイジーを見つけた」
カシェルはいつものように私に向かって優しく微笑む。
「今回は入念に準備しようと思ったんだ。昔、王妃が紫の瞳の能力について言っていた事を思い出したから。良い魔力を与えるには相手との信頼関係が大事なんだって。前の紫の瞳の女性とは、お金での繋がりだけだったからね」
今、カシェルがサラッと何か嫌な事を言った気がした。
「銀の国は、銀の国の初代王妃の命令でどの時代でも僕に最高の魔力を準備してくれている。ゆくゆくデイジーには魔力のコントロールの術を身に付けてもらい、僕に銀の魔力を魔法使いから移してもらうつもりでいた」
銀の魔法使いである神父様がニッコリ笑う。
「だけどそれだけじゃダメだ。万が一、僕を殺した犯人と戦いにでもなった時に他の属性の魔力ゼロじゃ返り討ちにあうからね。ある程度の魔力を備えておくに越したことはない。その為の協力者を探しにフェアリックス学園に赴任したけど、デイジーまで入学してきたからびっくりしたよ。そして僕が望んだ以上に、デイジーはどんどん魔法使いと接触し、魔力に慣れ、魔法をコントロール出来る様になっていった」
少しずつ、魔力を私から受け取っていたのはその為だったのね。
「カシェルは…いつも私に会いに来てくれていたのは、私を手懐ける為だったの?」
「信頼関係を築くには、恋人になるのが一番手っ取り早いからね。でも出会った頃の君は幼すぎて魔力を上手く操れないと思ったから、大人になるまで待つつもりだったんだよ」
カシェルの表情は変わらず、優しい微笑み。
「それって、つまり私の事を好きだからとかじゃなくて…」
ただ、紫の瞳だったから?信頼関係が必要だったから?
その言葉が口に出せなかった。
認めたくなかったのかもしれない。
カシェルと出会って8年間。
その優しさ、眼差し、囁きが全て今日の為だけだったなんて、信じられない。
最初のコメントを投稿しよう!