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「さぁそろそろ急がないと、デイジーさんのお連れ様が不審がります」
神父様が私の腕を掴み引き寄せ、私のおでこに手を当てた。
「しっかり受け取って下さいね。まぁ貴方のような小娘にどれだけ出来るか、見ものですけどね」と神父様が私の耳元で囁いた。
…安い挑発!だけど乗ってあげる。だって私は…。
全神経を集中させ、私の身体に入ってくる銀の魔力を片っ端から制御し、落ち着かせ、圧縮していく。
確かに前お会いした神父様や学園の寮の事務員さんの魔力に比べると格段に質も量も違うのがわかる。
密度、精度、滑らかさ。
カズマの赤の魔力のように素直さが全くないけど、この魔力の癖さえわかれば問題ない。
カシェルに褒められたことがあるほどの腕前なのよ!根こそぎ吸い取ってあげるわよ!
しばらくして、急に神父様が膝をついた。
「す、すみません…。これ以上続けると、私の”核”が…」お顔が真っ青だった。
危ない、危ない。私もちょうど限界だった。
魔力を圧縮しながら奥に閉じこめていったけど、それが流れてくる量に間に合わず私の身体が満タンになる寸前だった。
ほぅ…と私はため息をついた。
「さ、デイジー」
身をかがめたカシェルの頬を挟むように両手を当て、銀の魔力をカシェルに渡す。
まずは圧縮していない銀の魔力を全部渡した。
そして圧縮した魔力も渡している途中で
「この身体では…これが限界か。デイジー、もう充分だよ」とカシェルが言った。
「じゃ、デイジー。僕はもう行くね。巻き込んですまなかった。そして、君は…」カシェルは一瞬何かを考えていたようだった。
「君はまたフェアリックス学園に戻りなさい」
私はカシェルの胸に飛び込んだ。
そしてしっかり抱きついた。離れない、離さない。
「デイジー?止めても無駄だよ」
「違う、止めない。私も一緒に過去へ行く」
「え!?」
王子を…カシェルを助けるために、カシェルのそばを離れない。
『予言の書』がそう言うからじゃない。私が離れたくないからだ。
「だって過去に行って、もし魔力を使い果たしていたら、また戻って来れないじゃない!だから、私も行く」
困惑するカシェル。
もしかしたら、目的さえ達成すればカシェルは戻って来ないつもりだったのではと思えた。
「大丈夫。私の中に、まだ半分以上銀の魔力が残っているし、足りなくても私がいれば、過去の銀の魔法使いからも魔力が貰えるでしょ」
「小娘が…!何を勝手に…」神父様は座り込んだまま私を睨んだ。
何とでも言えばいい。カシェルを助けられるのは、私だけだ。
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