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出発の朝。
お父様とルーシィおじ様にはカシェルと教会へ行ってくるとだけ伝えた。
外に出ると、先日の神父様が待っていてくれた。
「わずかですが、私の回復した魔力もお持ちください。…デイジーさん、カシェル様をよろしくお願いします」そう言って私に銀の魔力を追加で与えてくれた。
寒いから、としっかり着込んだ上着のポケットには、3日分の食料とわずかなお金。400年前ではこのお金は通用しないらしいので、万が一、過去に戻る途中ではぐれてしまった時用だ。
「400年前はまだ今のように四季も制定していなかったな。確かあの頃、まだ赤の魔法使いが気温の調整をすることが苦手で、暑い日もあれば寒い日もあった。生まれ故郷の星と似た環境になるように、いろいろ努力したみたいだね」
そうか。遠い前世のカシェルは、この星以外で生まれ育ったのか。
どんなところなのだろう。
「カシェルは…生まれ故郷の星に、戻りたいと思ったことはないの?」
「最初の頃は不便さ故何度も思ったよ。故郷の星から持てる物は持てるだけ持ち出したけど、あれもない、あれも持ってこれば良かったってね。でも、何度も生まれ変わるうちに、この星も悪くないと思えたかな」
「ふうん、この星よりも便利な環境なんだ」
カシェルは「魔法が無くても人間が住めたからね」と苦笑い。
「さて。今から当時の僕が住んでいた王宮の場所に移動するよ。400年前、この辺りはまだ人が住める状態では無かったからね」
そう言ってカシェルは私を抱き上げた。
「ちょっと長い距離を飛ばすから、しっかり捉まっていて」
突然のお姫様抱っこ!カシェルの顔が目の前!
…キレイな横顔。
ほっぺにキスできそう…あ、ダメだ。つい、カシェルとキスしたことを思い出してしまった。そして芋づる式に、カズマともキスをしたことまで思い出してしまった!
うわぁぁぁ…。こんな時に何を思い出しているのよ!
でもどうなんだろう、カズマとキスしたこと、カシェルは本当はどう思っていたのかな。あの時、嫉妬してくれたんだよね?だからその後…あぁあぁぁ思い出しただけで恥ずかしい!
「デイジー?大丈夫?」気がつくとカシェルがけげんな表情で私を見ていた。
「ごめん、大丈夫」ドキドキしながらも、カシェルの首にしがみついた。
カシェルの呼吸が聞こえる距離。
もうずっとこのままでいたい…。
ふわっと宙を浮き、一気に上空まで上がり、車のように早いスピードで空を駆け抜ける。
上空は割と寒いので、着こんできてちょうど良かった。
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