犯人は誰?

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犯人は誰?

 廃墟となった小さな王宮の屋根に到着した。 「ここが、この星最初の王宮。今は誰も使用していないけどね」  カシェルが私を抱き上げたままテラスに降り立ち、壊れたテラス窓から閑散とした広間へと入っていった。  広間に続くいくつかの部屋のうちの1つに入る。  扉は無く、部屋の中は真っ暗だった。  私は、赤の魔法で部屋の内部を照らした。  小さな窓が1つある、狭く何も無い部屋だった。 「ここは元々物置のつもりで作った部屋だから、400年前に戻っても誰にも見つからないよ」  カシェルが私の右手を自分の頬に当て、銀の魔力を補充する。 「やめておくなら、今だよ」    手を離し、私をそっと降ろす。  私はカシェルを見つめ、黙って首を振る。  一緒にいる。そして一緒に帰る。  カシェルは優しく微笑み、輪っかに結んだハンカチを私の手首に通し、8の字にして自分の手を入れた。  そして私の右手とカシェルの左手の指を絡ませる。 「しっかり捕まっていてね。多分、過去へ移動中は僕に余裕がないと思うから」  お互いに相手の背中にもう片方の手を回して、私はカシェルの胸に顔を埋めた。  カシェルの鼓動が聞こえる。  その鼓動に自分を一体化させる。  カシェルが大きく息を吸う。  私も大きく息を吸い、吐きながらそっと目を閉じて力を抜く。  突然四方八方から風に押されたと思ったら、すぐに狭い部屋で突風が吹き荒れているような風が続いた。風に殴られ、地に足がつかず、大きく揺さぶられているような感覚だ。  かなり長い時間、それが続いた。  ヤバい、気持ち悪い。…吐きそう。  あとどれだけ続くのだろう…。  カシェルに支えられているとはいえ、立っている体勢が辛い。  握った右手が、手汗で滑ってしまいそうだ。  だけど、集中して過去に遡るカシェルの邪魔だけは出来ない。  耐えるしかない。  ふと、カシェルが身をかがめた。  そして私に優しくキスをした。  ほんの数秒のキスだったけど、その間、微量の緑の魔力がカシェルの唇から流れてきて、気分がスッと良くなった。  た、助かった…。  緑の魔力は、人間に対してもお薬のような使い方もあるのね…。
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