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私の手元にある銀の魔力で未来に戻ってみようにも、どうすれば出来るかさっぱり見当がつかない。
覚悟はしていたとは言っても、実際カシェルがいない、知り合いも誰一人いない時代に取り残されると、孤独と恐怖が襲ってくる。
一日中一人でカシェルのお墓で号泣している。
お父様に会いたい。ルーシィおじ様に会いたい。
ミーニャにも、アリアさんにも会いたい。カズマやキースにも…。
何よりカシェル、青い瞳のあなたに会いたい。
あなたの優しい微笑みが見たい。
あなたの優しい声を聞きたい。
…あなたに触れたい。抱きしめて欲しい。
例え私の紫の瞳の向こうに王妃様を見ていたのだとしても、私にとってはそれがカシェルだ。私が大好きだったカシェルだ。
泣いてばかりいる私を王妃様は優しく慰めてくれた。
『あの人は、どの時代に生まれ変わっても身勝手なのね』
「いえ!今回は私が勝手に付いてきたので…」
あ…!
もしかしたら、私が付いて来なければ…カシェルは魔力を使い過ぎることは無かったのかしら。帰りの銀の魔力の残量を心配して付いてきたけど、紫の瞳を持つ王妃様が生きていたのなら、心配の必要は無かった。
ひょっとして私の行動がカシェルを死に追いやった…?
ごめんなさい。
ごめんなさい。
カシェルを助けたかっただけなのに。
カシェルに戻ってきて欲しかっただけなのに。
私が、カシェルの重荷になって、余計な魔力を使わせた。
『デイジー、どうしたの?』
私の顔色が悪いことに気がつき、寄り添ってくださる王妃様。
ひとまず食事をするように、と私を食堂に連れてきてくれた。
食欲なんて無い…。
だけど、温かいお茶は冷たくなった私の指先を、心をほぐしてくれた。
私は自分のせいでカシェルが死んでしまった事を泣きながら話した。
『こればかりはわからないけれど…あなたが一緒でなければ、今この時代に到着しなかったかもしれないわよ。400年も遡ってくるなんて…相当な魔力が必要だったでしょうね。常に銀の魔力を補給出来る状態だったからこそここまで辿り着いたのよ。それに…今きっとカシェルも同じ気持ちよ。デイジー、巻き込んでごめんなさい、と』
「そう。このまま自分が死んでしまうという事がわかった時、デイジーを巻き込んでしまったことを本当に悔やみましたね。あなただけは帰れると確信していただけに。ですが一緒に来ていただいて、無事目的地に着く事が出来ましたし、心強かったのは確かです」
突然の男性の声に驚いて、声の方を見ると見知らぬ男性がドアの内側に立っていた。銀色の瞳をした…ちょっと小汚い青年だった。
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