銀の魔法使い

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銀の魔法使い

 銀の瞳の青年は、こちらにゆっくり歩み寄ってきた。 「デイジー、少し待たせてしまいましたか?」  …今この時代の銀の魔法使いはおひとりだけのはず。  つまり、この人は未来から銀の魔法使いだ。  まさか… 「…カシェル?」  私の心臓は大きく高鳴ってきた。 「それは、前世の私の名前ですね。今はユリウスと申します」  あぁ、カシェルはまた転生したのだ…! 「どうして。殺された原因も犯人もわかって、王妃様に会えて、謝る事が出来て…どうしてまた」うろたえる私。  カシェルと同じ魂なのに、髪色も雰囲気も違うので戸惑ってしまう。  銀の瞳が冷たく感じる。 「そうですね。私の望みは果たせたのですが、やはりデイジーを置き去りにしてしまった事が悔やまれたのです。なのできっとこれが最後の転生になるでしょう」  聞くと、ユリウスは銀の国の長子として生まれ、魔力を他の兄弟より多く保有していた。生まれた時から全ての前世の記憶を持ち、私を過去から連れ戻す事でこの繰り返す転生を終わらすことができる、魂が解放される事を知っていた。就学前から魔法の修行に励み、フェアリックス学園も主席で卒業した。  時間を遡る魔法を完璧に習得した今、神父としての仕事をしつつ、この王宮に向かって教会から教会へ歩いて移動し、少しずつ時間を魔法で遡り、魔力を回復させ…を3ヶ月程繰り返してやっと今、私に出会えたという。 「さぁ、デイジー。あなたを元の時代に送り届けましょう。でもその前に…」  ユリウスは申し訳なさそうに言った。 「お風呂と…何か食事をさせていただけますか?」
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