15人が本棚に入れています
本棚に追加
……なんか、マジでなんなのさ、この状況は。俺は都内に住むトシとヨシオに金を返しに行って、仕事があるからそのまま127号線を真夜中の天使しただけなのに。家帰ってシャワー浴びて、出勤前にちょっと海辺で朝日を眺めて気合いを入れようとしただけなのに。
てか母ちゃん。
あなたと地曳き網した記憶ございませんけど?
色々と混乱する俺と作者はとりあえず全てを水に流し、気を取り直すことにした。とりあえず海に漂う網を引けばいいだけだ。喫茶店のモーニングさえ諦めれば会社には間に合うし。
「若いんだからよお、死ぬ気で引きやがれ」
「うーす」
「なんだあ、その口の聞き方はよお?」
「さーせん! おねしゃーっす!」
「なんだ、やりゃあできんじゃねえか! おーし、じゃあ引っ張るぞお!」
おっちゃんの声が辺りに響き渡ると、色んなオッサン達が腰を落とし、踏ん張りながら、体重を後ろに預け始めようとした時「あれ? 真彦君?」と声をかけられた。振り向くと、なんと! 高校時代のクラスメイトのマドンナ淳子がいた。突然のことに困惑する俺。
あ、クラスメイトのマドンナ淳子って、誤字じゃないから。彼女の本名がマドンナ淳子。
「え? マドンナなんでここに?」
「え? 地曳きしにだけど?」
「え? コアラの所に嫁いだんじゃなかったっけ?」
「え? 嫁いだけど?」
「え? じゃあなんでここに?」
「え? 地曳きしにだけど?」
……おい、クソ作者。いつまでこれ続けるんだよ! 途中で楽しくなって、こんな不毛なやりとり付け加えんな! ってかなんなんだよ! マドンナ淳子って! クラスのマドンナは久美子だろお! それにコアラって、どんだけ情報古いんだよ!
「おい! せがれ! いちいちうるせえよ!」
「あい! さーせんっ!」
もうどうでもいいやと気持ちも萎えていた時、淳子が俺の横に並び俺の手を握ってきた。そして俺を見つめてくる。あれ? 淳子ってケッコー可愛くね?
「頑張ろ?」その一言にドッキュン!うん!俺、頑張る!
ちょっと鼻の下伸ばしてると魚屋のおっちゃんがジッと俺を睨んでいたのに気づいて慌てふためくと、なぜか急にフッと笑って「いいところ見せろよ」とか言ってくる。ちょっと気合い入る。嘘、気合い入った。
「おーし! 行くぞお!」
おっちゃんの掛け声に気合が入る。
「真彦君! 実はコアラとは離婚したの!」
おう! 知ってるぜ!
「真彦! ボディー! ボディーよ!」
それ、淳子のセリフだから!
「マットでえす!」
……おい、そこの知らん外人! マット様を馬鹿にすんな!
ひっちゃかめっちゃかな展開だけど、でもなぜだか気合いが入った。社会人になって毎日つまらない日常を過ごしていた俺に突然の訪れた非日常。仲間とバカばっかしてたあの頃もこんな日々の連続だったよな。
……わかったよ。お前らが望むならツッパッてやるよ!
「歳上への口の聞きかたあ!」
「あい! さーせん!」
「行くぞお! せーのーっ!」
腰を落として後ろに倒れ込むように体重を乗せる。砂浜に足を取られそうになるのを懸命に踏ん張る。重なる淳子の手がギュッと握られてドキッとする。
その時、俺の耳に「あんっ♡」って漏れ出た声が聞こえた。その瞬間、俺のリビドーとボルテージが急速に加速した!
最初のコメントを投稿しよう!