こねこのこえは、ときにせつない

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 子猫を包み込む為のタオルを用意し、カンガルーみたいなポケットのあるパーカーを着る。キャリーバッグはあるが、相手は弱った子猫。タオルに包んで大きめのポケットに入れれば、逃げはしないだろう。もし、逃げる体力があるなら、保護する必要も無さそうだ。  声だけを頼りに子猫を探す。人間が入れない場所に居たら諦めよう。それもまた、神による意思だ。  元々、弱者は野生では生き残れない。自然に反することを私はしようとしている。だから、それを拒むものが多いなら、神による意思で、自然淘汰が行われただけなのだ。  全ては、自分の無力さを誤魔化す言い訳に過ぎない。それを、誰に弁明する訳でも無い。だが、どうしても「やらない理由」を探してしまう時がある。心が弱っている時がそうだ。  正直なところ、命の責任を背負うのが怖いのだ。だから、その重みを背負わなくて済む理由があればと、そう思っていたのだ。  だが、神は小さな子猫を見捨てなかった。見つけた。見つけてしまった。地面で小さくなったまま動かない子猫。それでも鳴き続ける子猫。  確保は簡単だった。子猫には、抵抗する気力も体力も無かった様だ。  直ぐに連れ帰り、蒸しタオルで包んで温める。子猫の死因に多いのは低体温だと言う。先ずは保温しながらの汚れ落とし。人肌よりは高いが、触っても火傷はしない温度の蒸しタオル。それでマッサージしつつ、保温と汚れ落とし。何度か蒸しタオルを交換しつつ、子猫を出来るだけ綺麗にした。
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