3.形をなした病魔

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『拡張型心筋症』 “ 心臓の筋肉が収縮する能力の低下により、血液を適切に全身に送ることができなくなり、心不全や不整脈を生じる病気 ” 俺達のような凡人は、走れば息が上がるが時間経過と共に通常に戻る。 熱が出ても、数日すれば治る。 そんなごく普通の事が、コウにとっては普通ではない。 一度(ひとたび)体調を崩せば、それが原因となり深刻な事態を引き起こすのだ。 面会はもう少し回復してからにして欲しいとコウの母親に言われ、その時は諦めた。 「じゃ二戦目勝って会いに行こうぜ。それ聞いたらコウだって元気になるだろ」 真司が能天気な様子で言い二戦目に臨んだが、相手は県大会常連の強豪校。 全く歯が立たずボロ負けした。 「完敗」の報告は 具合の悪いコウを余計に気落ちさせると思い、結局その日は意気消沈したまま 各々の自宅に戻った。 コウの母親とは俺が連絡を取っていて、その時に初めて『拡張型心筋症』という病名を聞いた。 その病気について調べた俺は、どんなきっかけで命に関わるか分からない爆弾のようなものをコウはずっと抱えていたのだと知り、怖ろしくなった。 それでも回復に向かっていると聞き、数日後の退院を待って自宅に顔を見に行く事にした。 淳太達も行きたがったが、聞かされた病名の事も自分の中で消化できていなくて、コウの回復がどの程度なのかも分からないので、まずは自分が行って様子を見て来ると伝えた。
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