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久し振りに見たコウの顔は一段と白くなって、体も一回り小さく見えた。
まだ安静が必要で、ベッドの上で体を起こした状態のコウの輪郭はとても儚げに見えてしまった。
俺は毎日、日焼けした生傷の絶えない筋肉質な輩に囲まれていて、当然自分もその中の一人で。
コウの方も、入院中 病人ばかりの中に居たから尚更、目の前に居るものが自分とは全く異質なものだと、改めて感じてしまったと思う。
目が合った瞬間、お互い言葉がすぐに出なかったのがその証拠なのだろう。
「賢人、試合行けなくてごめんね!
二戦目、強豪校と当たっちゃったんだって? 残念だったね。でも県大会で一勝できたなんてスゴイよー!
あ〜見たかったなぁ」
コウは眩しい笑顔を見せ、俺を労ってくれた。
俺は、ただ好きな事をして走り回っていただけだ。
その間、こいつは苦しい思いをして病気と闘って……
きっと俺達みたいな健康な人間を羨んで。
どうして自分だけ……と悔しい思いもしただろう。
ふと目の奥が熱くなり、俺は焦った。
ダメだ! 今泣いたりしたら、コウが自分は深刻な状態なのかと勘繰ってしまうじゃないか!
コウは多分、俺の目が潤んで来た事に気付いてる。
「いや〜俺、部長だから負けても皆を励まさなきゃならなくてさ。
コウの顔見たら、勝った報告できなかったのが悔しくて、急に気が緩んだ。ごめん!」
俺は涙の訳をそう言って誤魔化した。
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