オンライン①

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オンライン①

無趣味でやる気がない人間にとって、大学生活は大いに暇なものである。そこそこに講義を受け、そこそこに友達と遊び、そこそこにバイトをする生活。そんな日々の暇を少しでも潰せるかと思い、俺はネットの広告で見かけたオンラインゲームを始めてみた。 広がる新世界、まだ何も持ってない自分。さて何をしようかと広場のような場所で立ち尽くしていたところ、突然声をかけられた。 『初心者さん?はじめまして』 やたらとかっこいい騎士のような装備のキャラクターだった。こんなにすぐ話しかけてもらえるとは思わなかったから、なんだか嬉しい。 『はじめまして!たった今この世界に降り立ちました!』 『あはは…スキあり!』 『えっ?』 次の瞬間、斬られていた。一体どういうことなのだ。これ、モンスターと戦うゲームでしょ?俺を殺してどうする! 体力がわずかばかり残っていたので、わけもわからず必死で逃げたが、騎士は同じくらいのスピードで追いかけてきた。完全に遊ばれている。 助けを求めようにも文字を入力することすらままならず、もうこんなゲーム強制終了しようかとも思い始めたところで、まばゆい光が俺を包んだ。すると、体力はみるみるうちに回復していく。 『始めたばっかりの人を攻撃するなんて、卑怯です!戦いたいならわたしが相手になります』 そう言って俺の前に割り込んでくれたのは、可愛いうさ耳をつけた小柄な女の子だった。 『ちっ…つまんねぇな』 騎士はそれだけ言い残して姿をぱっと消した。 『大丈夫ですか?いきなりびっくりしましたよね?』 女の子がパッとこちらを振り向いた。よく見ると、顔も服もめちゃくちゃ可愛い!しかも強くて優しいとか…惚れそう。 『あれ?聞こえてます?』 『あっはい大丈夫です!俺、こういうゲームって初めてでよくわかってなくて…人間?に攻撃されたりするんですね』 『えっと…そうですね。でも始めたばっかりのの人を攻撃してくるなんて、ほんと卑劣な一握りの人だけなので!このせいでsnowさんがやめないでくれると嬉しいです(>_<)」 snow…?って一瞬疑問に思ったけど、そういえばそんなハンドルネームを付けたんだった。1万円札が欲しいな〜と思い、福沢諭吉の「ゆき」を取ってsnowだ。 『メイさんはこのゲームが大好きなんですね』 表示されている名前を参考に呼んでみると、メイさんははしゃいでるみたいな動きをした。 『そーなんです!世界が広くて景色がきれいだから、お散歩するだけでも楽しいし、可愛い装備が売ってると、恥ずかしながらついつい課金しちゃいます♪色んな人と会話して一緒に冒険するのも楽しくて…そうだ!ご迷惑じゃなければ、わたしと一緒に遊びませんか?案内できます!』 メイさんが怒涛の勢いでメッセージを送ってきた。ちょっと笑ってしまうけど、初対面の俺に親切してくれるなんて、いい人だな。 『ありがたいです。ぜひお願いします!』 その後はモンスターを倒しに行ったり武器と防具を揃えに行ったりして、あっという間に時間は過ぎていった。 ふと時計を見るともう夜の11時だ。明日は1限から欠席できない授業があるし、そろそろ寝ないとまずい。 『メイさん、俺そろそろ抜けますね。今日は楽しかったです』 『それはよかったです!わたしも楽しかったです〜』 『本当ですか?こっちのが圧倒的にレベル低いので、メイさんがつまんなくないのか心配で』 『そんなことないですよ!snowさんのお話面白くって、画面越しにずっと笑ってました』 『そうなの?!』 興奮して思わずタメ口で返してしまった。謝ろうか迷っていると、メイさんから先にメッセージが来た。 『snowさん、反応がいちいち素直で新鮮で……よかったらまた一緒に遊びたいな』 ふあっ…!キュンときた!ズキュンときた!メイさん、めちゃくちゃかわいいー! 『俺も!一緒に遊びたい!明日とかどうかな?』 …勢いよくがっついてしまった。完全にキモい男じゃないか。気分を悪くさせたらどうしよう。 『じゃあ明日また同じ時間に、最初の村の近くの吊り橋で待ってるね。おやすみなさい』 『あ、はい!おやすみなさい!』 マイエンジェル・メイさんは特に気にしていない様子でそう言ってくれた。
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