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ヤツが動く。
頑丈な体は特徴的な色艶があり、
身軽に動ける足を持って、
自由自在に動き回る。
素早く角を曲がり、
壁を登り、空中を飛ぶ。
ヤツには耐性がある。
アルコールぐらいではびくともしない。
下手すると怒って飛びかかってくる。
専用の薬が必要で、無力な私たちにはなす術がない。
「キャー!!嫌っ!来ないで!!」
標的にされた雪が叫ぶ。
「雪!!」
私が呼ぶと、必死に走って来て抱き着いた。
雪は涙目で震えている。
「あ!月、月!!ダメだ!!戻って来い!!」
向かい側で諭が月シタを呼んでいる。
捕まえようと伸ばした手は、わずかに尻尾の先を掠って届かなかった。
目を真っ黒に輝かせた月は、果敢にヤツへと向かって行く。
「月!!ダメ!月!月シタ!!」
チラッとこちらを見ると、ヤツがいる方へ走って行ってしまった。
「秋ちゃん!金丸くん、金丸くん呼ぼう!!」
「あ、そうか、そうだね!うん!」
金丸の存在を忘れていた。金丸なら、何とか出来る!!
「金丸!!助けて!!」
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