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 あああは、アトランティス王国から遠く離れた村へと到着した。   「ようこそ旅人さん。この村には何の御用で?」   「はい」    見知らぬ人間だったにもかかわらず、ヨソモノダイッキライ村の村人は、あああを温かく出迎えた。    ヨソモノダイッキライ村の村人たちは、村から出ることはほとんどない。  だからこそ、余所者であるあああに興味津々だった。    高そうな服。  高そうな剣。  高そうな盾。    ヨソモノダイッキライ村の村人たちは、あああのすべてに興味津々だ。   「長旅でお疲れでしょう。まずはお風呂でもいかがでしょうか?」   「はい」    あああは村人の好意に甘えて、村の温泉へと案内される。  ヨソモノダイッキライ村は、貧しい村だ。  各家庭にお風呂が設置されている、ということはない。  村に唯一存在する大きな温泉だけが、唯一のお風呂。   「はい」    あああは、温かいお風呂に浸かり、汚れと疲れを落とす。    あああはアトランティス王国の国王だった。  しかし、アトランティス王国の外に出てしまえば、何者でもない。  アトランティス王国もまた、余所者を受け付けない排他的な国だったため、世界に知られていないのだ。  ヨソモノダイッキライ村の村人たちも、もちろんアトランティス王国のことを知らない。  あああのことを知らない。    村人たちは、温泉の壁に開いた穴から、温泉に浸かるあああの様子を眺める。  ヨソモノダイッキライ村の村人たちは、余所者を信用しない。  監視するのは当然だ。   「様子はどうだ?」   「何かしようとする様子はないな。普通に温泉を楽しんでいるだけだ」   「よしよし。余所者は何をするかわからんからな。気をつけろよ」   「もちろんだ」   「ところで男衆、この温泉の壁に開いた穴、普段は何に使ってるんだい?   「そりゃあおめえ、女集が温泉入ってる時覗いてるに決まって……あ」    あああが温泉から上がった時、ヨソモノダイッキライ村の男衆は、木で作られた十字架にロープでぐるぐる巻きにされ、女衆から石を投げつけられていた。  免れたのは、まだ性を知らない幼い子供たち。   「変態!」   「変態!」   「変態!」   「変態!」    男衆は、温泉から出てきたあああを睨みつける。    これが、あの余所者の策略か。  やはり、ヨソモノダイッキライ村を混乱に陥れることが目的だったのだ。  そう察した時には、全てが遅かった。    男衆は三日三晩張り付けにされ、四日目にようやく解放された。  しかし、地獄はまだまだ続く。  男衆は、無期のお小遣いカットを言い渡され、罪人のように貧相な食事と過酷な労働が決定した。  ヨソモノダイッキライ村は、女集管理の元、生まれ変わりの道を歩み始めた。   「はい」    あああは、男衆から注がれる酒を満喫していた。  ヨソモノダイッキライ村を正した正義の人として、あああはヨソモノダイッキライ村の村長となり、たくさんの嫁を娶って幸せに暮らしていた。
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