それは許可無し乗っ取りだった

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それは許可無し乗っ取りだった

「……もう……疲れが取れませんわ……勝手に楽しくおしゃべりをしてくれたせいで」 いつものピシッとした背筋を伸ばした状態ではなく、ダラけた様子でいつもはしない足を組んだりといった姿勢を取っていたせいか、ロメリアは心無しぐったりとした様子だ。 『宵娘シェナ』と名乗った何かは、ヴィヴィニーアの持つ知識を確かめ、王宮の研究室にもない天候規則や地変による生物の大移動など、未開の地ゆえに人の目では記録できなかった歴史を話すことを散々楽しみ、『自分が加護できるのはここまで…』という最後のセリフと共にふわりと気配を消したのである。 それが実際に精霊だったのかヴィヴィニーアには自信がなかったが、精神的に眠らされて乗っ取られていたロメリアは話を聞き、あっさりと頷いた。 「……まったく、何を勝手なことをしでかしてくれるのでしょうね。おそらくヴィヴィニーア様にはデュークがついているのと霊的な感応力が低いために乗り移れなかったのでしょう。次点で彼女が憑くに最適な者は外にいるアディーですが、こんなこともあろうかと同席させませんでしたからね」 「あの……」 「だからといってわたくしの身体を使い、勝手にヴィヴィニーア様と……何かおっしゃいまして?」 「いや、あの…うん……かの者がお前の従者だと理解はしているのだが……その、何故従者が愛称で呼ばれ、私は……その……いっ、いつまで……」 「何をブツブツ言っておられるのですか?ええ、アディーはわたくしの従者で、このホムラの夫。まさかわたくしの貞操をお疑いですか?」 「いっ、いやっ!!いやいやいやいやいや!!そ、そんなわけはないっ!!」 大聖女であるから周囲は修道女ばかりかといえばその逆で、大神殿の表舞台に立つのも、私的な部分でも本当に女性の手がなければならない場面以外では、大神官以下が常に側にいる。 その中には良からぬ想いを抱く者もいそうだが、歴代の大聖女はすべて自分が許可した者以外が近付こうとすると物理的に排除してきたらしい。 「だいたいロメリアなら僕を簡単に殴り飛ばすぐらいだからな。王族に手を出す者が、自分の周りにいる不埒な者をのさばらせるわけはない……と、信じている」 「何ですか、それは。単にヴィヴィニーア様の場合は加護が強いので、私に吹っ飛ばされても死なないというだけです。だいたい、直接お殴りしたことはございませんが?」 それもどうだ…と思わないでもないが、ロメリアの隣に座るホムラは今は目を覚まして微笑を浮かべているのを見て、ゴクリと言葉を飲み込む。 そして考えてみれば、ヴィヴィニーアは確かに聖杖で殴られたり、聖杖から放たれる聖光に吹っ飛ばされたりしたことはあるが、ロメリアがロメリア自身の肉体を持って直接的な暴力をふるったことはない。
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