1、人助け

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女性は小さなカバンからスマホを取り出した。 「ご家族ですか!?」 「ええ……病院に行くなら、知らせないと……!」 ロックが外れるのを見て、そのスマホを受け取る。 「私がお電話します、どなたにですか!」 「孫に……ああ、今は授業中だろうから……学校へ……」 画面を見せながら連絡帳を開くと、女性は横浜第二高校だと告げた、スピーカーにしたまま発信すれば、2コール目で繋がる。 『はい、横浜第二高校、石原です』 声に反応して女性が名乗るけれど、小さな声はさすがにマイクが拾わないようだ。 「あの! フジエダです! いえ、私は通りすがりの者ですが!」 女性が名乗った名を繰り返す、電話の向こうで「はあ」と間抜けな声がした。 「フジエダさんが道端で具合が悪くなられて、今、救急車を呼びました! これから病院に運ばれるので、お孫さんに連絡をしたいと……!」 「ルイです」 お孫さんの名前だな! 「ルイさんに、お伝えください!」 言いながら思った、なぜ孫なんだろう。こういう時は旦那さんかお子さんではないのか、なぜわざわざ高校生の孫に──。 『ええ! わかりました! 藤枝くんに伝えます!』 緊急事態は分かってくれたらしい、病院が分かったらまた連絡をくださいと言って電話は切れた。 そうする間に救急車のサイレンの音が聞こえてくる、ああ、よかった、これで助かるんだと安心できた。
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