マリオは切ないけれど、ちょっぴり幸せな気分だったんです

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マリオは切ないけれど、ちょっぴり幸せな気分だったんです

 お姫様は侍女とおしゃべりをしたり、本を読んでいたりして、聴いてはいなかったんです。たまに耳に入っても侍女とくすくす笑い合うだけでした。  王様やお妃様から衛兵に至るまでみんな気づいていましたが、マリオは衛兵にもあいさつをして礼儀正しく、悪いことをしているわけでもないので止めたりはしませんでした。  お姫様の部屋の明かりが消えるのを見ると、マリオはギターを抱えて家に帰ります。みなさんはムダなことをって思うかもしれませんね。  でも、石畳にぎこちなく歩く影を映しながら、マリオは切ないけれど、ちょっぴり幸せな気分だったんです。  一人でため息を吐いたり、神様に無理難題を言ったりするよりはよっぽどよかったんです。
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