朝起きると体の中に鉛を入れられたみたいに感じました

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朝起きると体の中に鉛を入れられたみたいに感じました

 そんなことが何か月も続いたある日、マリオは朝起きると体の中に鉛を入れられたみたいに感じました。重くて、だるくて、パンもチーズも食べる気がしません。  やっとのことで作業机の前に座りましたが、革を切るハサミをつかむ手がふるえ、革を縫い上げる針に糸を通そうとしても目がかすみます。  いつもならベッドに寝ているところですが、昨日、お肉屋さんの前を通りかかったときに、おかみさんから仕事を頼まれたんです。 「あたしの孫がよちよち歩きを始めたんだよ。だから、ひとつかわいい靴を作ってもらえないかい? あさってがちょうどお誕生日だから、それに間に合うとうれしいんだけどね」  その子がお嫁さんに抱かれて出てきたのを見て、マリオは言いました。 「とってもかわいい坊やだ。今は仕事もたまっていないことだし、あさってまでに必ず作りますよ。心を込めて作らせてもらいます」
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