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深い水がめの底を見つめながら、 「もうすぐだ」とつぶやきます
ようやく革を縫い合わせ、木型にかぶせて靴底に釘を打つ頃には、体の調子はますます悪くなっていました。
金づちを振り上げるのもやっとです。何も食べる気にならず、時々よろけながら部屋の隅に置いてある水がめまで行って、熱っぽい喉に水を流し込むだけです。
深い水がめの底を見つめながら、
「もうすぐだ」とつぶやきます。マリオはその言葉の意味が自分でもわからなくなっていました。
陽は傾いていきますが、まだ靴は完成しません。ていねいでも仕事の早いマリオですから、いつもなら日に三足は作ってしまい、口笛を吹きながらお城に向かうのに。……
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