爆弾

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「なぜ?誘ってないわよ」 「あんたさ、普通こういうときはありがとうって言うもんでしょ」 「頼んでもないのに?」 わかってはいたけど、超軽く好意を踏みにじってくるな、こいつ。 悔しくてイラつくけど、仕方がないのでいったん飲み込む。 我ながら引く。 引くけど、校庭で解散になった時点でさっさと帰れば良いのに、わざわざ警察に見つからないように気をつけながらこんなとこまで来ちゃってる私は最初から分が悪い。 私はこいつに無事でいてほしいし、爆弾作ったり盗聴したり、何しでかすかわかんない部分も含めてちゃんと見守りたい。 だから誘われてなくても行くしかない。ていうか、こいつと一緒に行きたい。 それにもうひとつ気がかりなこともできてしまった。 映美だ。 あのとき映美は職員室に先生を呼びに行った。 警察が無事と確認できていないという映美は、職員玄関付近で犯人と鉢合わせし、本当に人質になっているかもしれない。 ここまで知っておきながら、「じゃあ」って帰る気にはとてもなれない。 「とにかく、行くから」 「別に一緒に来てもいいけど、責任はとらないわよ」 もとより興味なさげに、細長い包みを抱えて大粒来聖が立ち上がった。 私は緊張で生唾をのむ。 これが例の出来上がったばかりの爆弾なのだろう。 「ああ、そういえばそれ、ちゃんと持って行って」 そう言って、大粒来聖が指さした先には昼休みに私が忘れたサイダーの缶があった。 「今?荷物になるからやなんだけど。こんなん後でよくない?」 「よくないわ。ここにあなたがいた証拠になる。この騒ぎのおかげで田口先生のお説教はだいぶ先、あわよくば有耶無耶になるかもしれないのに、こんなの置いておいたら墓穴でしょ」 大粒来聖の盗聴によると、犯人は職員玄関から押し入り、教頭と栗林を襲った後、しばらくその辺をウロウロしていたけど、やがて生徒のいる東校舎へ向かったらしい。 田口による緊迫した校内放送が流れたのは襲撃から7分後で、傷を負いながらも職員室まで逃げた栗林が状況を知らせ、通報および全校避難となった。 その際、犯人に状況を悟られないよう田口は放送箇所を東校舎だけに絞った。 その後の状況から犯人はおそらく東校舎内にいると思われるものの断定はできず、また消息不明の女子生徒二人(本当は映美一人だけど)の居場所もいまだ特定できていないため、警察はまだ様子見に徹しているとのことだった。 「警察としては人質がいるかもしれない現段階では犯人を刺激しないようにあまり校舎には近づかないようにしている。私たちも外から見えないよう窓側の壁に沿って中腰で進みましょう」 「それはいいけど、犯人がどこいるかもわかってないの?超危ないじゃん」 「怖いなら来なくていいのよ?」 「うるさいな、行くってば」
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